皆さんは中学受験における地頭は何だと思いますか?
私の第1感は「知識」ではなく「思考力」でした。
知識だけ備えても中学受験では戦えないという考え方です。
一方で上記直感を正であると仮定し各問題を「知識」と「思考力」でカテゴリー分けしてみると、認識と結果にかなりのギャップがありました。
そこで今回は「知識と思考力の狭間とは」で記事を書いてみます。
海城の問題をサンプルで利用
過去問を解いたことがあり、かつ海城祭にも行った縁もある海城の問題をサンプルとして利用しました。
単にブログとしての縁だけで海城の問題を選んだわけではなく、今回の議題として非常に有効な問題でしたので採用しています。
2023年算数 大問3です。
AD:DB = 1:1
BE:EC = 2:5
AF:FC = 3:1
ここから色々な比を求めていく問題です。
問1は知識か思考か?
「三角形 AEF と三角形 ABC の面積の比を最も簡単な整数の比で求めなさい」
これは以下の公式、法則を利用するだけです。
- 三角形の面積は底辺×高さ×1/2
- ゆえに三角形の高さが同じであれば面積比が底辺の比となる
ABCに対するAEFであることからはじめにACEの面積比を求め、そこからさらにAEFの面積比を乗算するだけです。すなわち
5/7×3/4 = 15/28
三角形 AEF と三角形 ABC の面積比なので、答えは以下になります。
15/28 : 1 = 15:28
三角形の面積の比が底辺の比である、さらにはその面積を組み合わせていることからこれは思考力問題と言っていいのでしょうか?
個人的にはこれは知識問題です。
中学受験は経験していませんが、高校受験でこんな問題は何回も経験し知識として備わっています。
このレベルの問題で思考力を駆使し回答を導き出すようでは難関校に受かるべくもありません。
問2は知識か思考か?
「DG:GF を最も簡単な整数の比で求めなさい」
これは以下の公式、法則を利用するだけです。
- 三角形の面積は底辺×高さ×1/2
- ゆえに三角形の高さが同じであれば面積比が底辺の比となる
- 補助線を引く ←New!
このように補助線を引いてみると、三角形の面積比が底辺の比となることを考えればおのずと答えは求められます。
底辺をDG、GFとするとADGとAGFは高さが一緒の三角形、同じくDEGとGEFも高さが一緒の三角形となりますので、やはりADEとAEFの面積比がDGとGFの比になります。
DG:GFの整数比なので、答えは以下となります。
2/7×1/2 : 15/28 = 1/7 : 15/28 = 4 : 15
補助線が必要であることからこれは思考力問題と言っていいのでしょうか?
思考力問題に振り分けること自体には異論はありませんが、個人的にはこれも知識問題です。
補助線はセンスではありません。
ある程度量を消化し、補助線をどこにひけばいいか、どこにひくべきかは事前に知識として備えるべきです。
その場で補助線をどこにひくべきか悩んでいるようでは習熟度が足りていません。
問3は知識か思考か?
「AG:GE を最も簡単な整数の比で求めなさい」
これは公式、法則は全く同じで、ADFの面積を求めた後にDEFの面積はABCからADF+BDE+CEFの面積を引くことで求める形になります。
一応丁寧に書くとADFの面積割合は以下のように補助線を引き求めます。
1/2×3/4=3/8
他の三角形の面積割合はすでに求めているので、
DEFの面積割合は以下になります。
1 - (3/8 + 1/7 + 5/28) = 17/56
AG:GE の整数比なので、答えは以下になります。
3/8 : 17/56 = 21 : 17
補助線に加えDEFの面積割合は直接求めることができないことから、これこそ思考力問題と言えそうでしょうか?
個人的にはこれすらも知識問題です。
本番で初めて思考力を総動員して解法を導き出しているようでは時間がいくらあっても足りません。
「思考力」を正確に定義する必要がある
ということで中学受験の問題を知識問題か思考問題かカテゴリー分けすると袋小路に入ってしまいました。
「思考問題と振り分けるのは同意するが知識として備えておくべき」つまり、結局は「知識」とすべきであるという問題が多かったのです。
さきほどの海城という難関校の大問3ですら自分の観点ではすべて知識問題としてカテゴリー分けされました。
実際に高校受験でいやほど補助線を引いてきた自分は大問3は知識問題として扱い、黙々と回答を導きました。
これが何を意味しているかというと、そもそも「知識」と「思考力」を正確に定義しないと狭間なんて見つけることが出来ないということです。
パターン化した問題は単に「知識」と言ってしまっていいのか?
そもそもパターン化するために「思考力」が必要だったのではないのか?
Inputの時に思考力を駆使し、Outputの時は知識問題くらいに扱えないと中学受験としては戦えないのではないのか?
「知識」と「思考力」は密接に絡み合っており、今の浅い検討では単純に分けることすら出来ていません。
まとめ
今回は「中学受験における地頭とは何か」を明確にするために「知識と思考力の狭間」を探ってみました。
結論としては「知識」と「思考力」は密接に絡み合っており、それぞれの言葉を正確に定義しない限り狭間も見つけられないということでした。
色々書いていますが、言ってしまえば補助線問題で必要なのは「知識」ですか「思考力」ですかって話です。
これを「思考力」、つまり地頭の違いが勝負を分けると思っている時点で中学受験では戦えないのではないのかというのが自分の意見であり、であるが故に今回の議題は綺麗に帰結できなかったという話になります。
これもブログならではですね。
では理系パパでした。