前回、前々回と「遺伝」「学力の経済格差」について書いてきました。
今回は本当に導きたかった結論を数学的根拠を元に記載していきたいと思います。
- SES(社会経済的背景)という親の頭の良さ×経済力を表現した指針がある
- SES(社会経済的背景)と成績の相関係数が算出されている
- 親の頭の良さ×経済力は子の成績とどのくらい相関している?
- 数値の落とし穴
- 日本語の怖さ
- まとめ
- 【番外編】大作になった理由
SES(社会経済的背景)という親の頭の良さ×経済力を表現した指針がある
SES(社会経済的背景)という指数があります。
詳しくは割愛しますが、簡単に言うと学歴(年数)と年収を元に親の頭の良さ×経済力を表現したものです。
↓引用:保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究
レポートではこのSESを4つのカテゴリ(Lowest/Lower/Upper/Highest)に分け詳細な分析を行っています。
例えば図表1-3の家庭収入だけを見てもLowest354万、Lower532万、Upper683万、Highest940万ときれいに分かれているのがわかるかと思います。
SES(社会経済的背景)と成績の相関係数が算出されている
今回のレポートではこのSES(社会経済的背景)と成績の相関係数が算出されています。
↓引用:平成29年度全国学力・学習状況調査 保護者に対する調査結果概要
小6で0.38、中3で0.39となっています。
相関係数というのは2つのデータの関係の強さを示す指数で、値が大きいほど相関関係が強いということになります。
親の頭の良さ×経済力は子の成績とどのくらい相関している?
相関係数0.39と言われてもどのくらいのばらつきなのか想像つきません。
そこでエクセルのRand関数を利用して相関係数が0.39となる散布図の例を作成しました。
それが以下です。
わかりやすいように縦軸、横軸ともに0~100の範囲としています。
この散布図を見てどう思いますか?
確かに子の学力は親の頭の良さ、経済力と相関がありそうですよね。
そこは私も認めます。
でも
だから何?
となりませんか?
あなたは頭がよく、経済力も高いかもしれない。
でも、お子さんは残念ながら勉強が得意ではないのかもしれない。
もしくはあなたは残念ながら頭が悪く、経済力も低いかもしれない。
でも、お子さんはとんでもない才能に満ち溢れているかもしれない。
相関係数が高いというのは相関関係が強いということを示しているだけであり、因果関係を示しているわけでは決してありません。
(親の頭が良ければ子供の頭も良くなるわけではない。経済力もしかり)
結局我々親ができることは頭が良く経済力が高いからと言って子供に同じような人生を求めることでもなく、頭が悪く経済力が低いからと言ってどうせ子供もダメなんだと嘆くわけでもなく、子供をよく観察し特徴を見極めできることをできるなりに粛々とやっていくことしかないと思いませんか?
これが相関係数0.8とか言われてしまうとなかなか厳しいところがありますが、数学がこれだけのバラツキであることを証明してくれているわけです。
数値の落とし穴
数学には平均値や中央値、標準偏差や今回の相関係数など、様々な値、指標が存在します。
それぞれの数値の意味を正しく知らないと落とし穴にはまり込んでしまいます。
例えば今回の散布図を4つの範囲に分け、平均値を元に棒グラフ化すると以下のようになります。
バラツキ(相関係数)を知らないままだと「頭の良さは遺伝するんだ、経済力が低いと子供の学力は低いんだ。やっても無駄だな。。」のグラフが出来上がりです。
同じデータを元にしているのに、受ける印象が全く異なるのが数学の怖さです。
日本語の怖さ
もう一つ、数学の怖さ以上に日本語の怖さがあります。
相関関係があるということは
- 親の頭の良さは遺伝する
- 親の経済力は子の成績に影響する
という表現は正しいのです。
ここまで読んできた皆さんなら「頭の良さは遺伝する?だからどうした」かもしれませんが、このような見出しはアクセス数が稼ぎやすいので記事になり、その都度物議をかもすわけです。
上記表現にはどの程度?という程度問題がすっぽり抜け落ちているので、それがあたかも絶対で抜け出せない事実なのかと誤解してしまう日本語の怖さがあります。
まとめ
今回は常に物議を醸しだす「頭の良さは遺伝するのか」「学力の経済格差」に対し、数学的根拠をもとにその位置づけを書いていきました。
結論から申し上げますと『日本語の怖さ』で述べたとおり「頭の良さは遺伝する」「親の経済力は子の学力に影響を与える」、これらは間違いなく事実です。
事実なのですが、文面だけでは皆さんが想像できないほどそもそも「ばらつき」が大きいです。
↓このくらいのばらつき
ですので「遺伝」や「経済力」で一喜一憂するより、子供一人一人を見て実直に向き合っていく方がよほど理にかなっている、というのが私個人の意見です。
統計学はばらつき(分散など)を持ち出さずして何も語れません。
にもかかわらずそこを飛ばして不毛な空中戦になっているのを見て、理系パパとしてここはしっかりと明記しておくべきだということで記事にしました。
もちろんこのばらつきを見てもそのうえでやはりダメなんだと嘆くのは自由です。
コップに水が半分入っていたとして、「半分も入っている」と思うのか「半分しか入っていない」と思うのかは個人の感覚ですので。
では理系パパでした。
【番外編】大作になった理由
実は大作になった理由に私の環境があります。
過去記事に書いた通り私の親は中卒でとても高学歴とは言えません。
でも私の親は学がないからと言って特に卑下することなく、逆に**大学以上に行かないと許さないと梯子を外すわけでもなく、黙々と自分を信じてくれていたことです(言い方を変えると自分の人生だから自分で頑張ってね状態。こっちの方が表現が正しいような)。
ちなみに私は両親の背中を見ていたので学歴に価値を見出せず、最初は中卒でいいやと思っていました。
それが中卒希望→高卒希望→旧帝大卒希望→旧帝大院卒→エンジニアとなっているから不思議なものです。
できることをできるなりに進めていった結果、今の人生があります。
数学的にもこれだけばらつきがあるとわかってある意味安心しました。